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ヒートショック(2)

ヒートショックとは「急激な気温の変化で血圧が上下し、心臓や血管などの身体にダメージを受けること」をいいます。冬の寒い時期に急に温かい場所から寒い場所に行くと、体の熱が奪われないよう血管が収縮して血圧が上がります。入浴などで体が温まると血管が拡がり、血圧は低下します。血圧が短時間で激しく上下することが、心筋梗塞や脳内出血、大動脈解離など重大な脳・心血管疾患の引き金になります。

初期症状

ヒートショックの症状は、軽度であれば立ちくらみやめまいとして現れます。これは血圧の急激な低下によって脳に十分な血液が送られなくなることで起こります。ヒートショックが重度になると、意識消失・頭痛・嘔吐・脱力・ろれつが回らない・胸や背中の痛みなどの症状があらわれます。これらの症状がある場合は、脳卒中や心筋梗塞を発症した恐れがあります。

治療方法

めまいや立ちくらみは血圧の低下による脳貧血の症状です。まずはゆっくりとその場に座るか、可能なら横になるなどして頭の位置を低くして、血圧の変動が落ち着き、症状が改善するのを待ちましょう。症状がおさまらない時は、脳・心血管疾患を発症した恐れがありますので、速やかに救急車を呼んで下さい。医療機関で適切な処置を受けることが大切です。

予防方法

ヒートショック予防には、急激な気温変化を避けることが大切です。寒い時期の入浴やトイレを使う時が要注意です。入浴時にはあらかじめ脱衣所や浴室を温め、お湯の温度をぬるめ(38度から40度未満)にしてください。また、急に立ち上がらず、ゆっくりとお風呂から出るよう心がけてください。日本のトイレは北側に位置し室温が低いことが多いですので、トイレをあたため、できるだけ居室との温度差が小さくなるよう工夫しましょう。

その他注意すべきこと

ヒートショックのリスク因子には、①65歳以上、②糖尿病などの生活習慣病がある、③睡眠時無呼吸症候群や不整脈がある、④熱いお風呂が好き、⑤30分以上お風呂につかる、⑥飲酒後すぐに入浴するなどがあげられます。①~③は、心血管リスクが高い状態であることをしめします。当てはまる人は生活習慣に気を付け、持病がある場合は担当の先生と相談し必要な治療をきちんと受けてください。④~⑥は、ヒートショックを起こしやすい入浴習慣ですので、ぜひ改善していただければと思います。

長岡中央綜合病院
副院長 循環器内科
中村 裕一

掲載日:2022年11月01日